特集記事 楽しい、美味しい、大崎を伝えたい 特集記事 楽しい、美味しい、大崎を伝えたい

放送作家すずきBのびぃ散歩

放送作家すずきBのびぃ散歩 in 大崎町

2022年から「大崎町ふるさとPR大使」を務めていただいているタレントの薬丸裕英さん。
薬丸さんの父方の先祖は、戦国時代に現在の大崎町の周辺を守っていた武将で、薩摩の島津氏と争った有力な豪族 肝付氏の家臣「薬丸兼将(かねまさ)」でした。ご先祖様が戦国の厳しい時代を懸命に生き抜いた大崎町のこれからの成長を見届けていただき、全国に向けた町の魅力の発信にご協力いただきたいと考え、薬丸さんにPR大使を務めていただいています。

薬丸さんのPR大使就任を含め、かねてから大崎町のPR活動を支援をいただいている放送作家のすずきBさんに【すずきBのびぃ散歩】と題して、薬丸さんの大崎町ツアーにアテンドいただき、レポートしていただきました。

薬丸裕英さんと巡った大崎町の旅

何年前からだろう、鹿児島県大崎町とご縁があってイベントやPRのお手伝いをさせてもらっている。過去には「賛否両論」笠原シェフや料理家コウケンテツさんなどにお願いし、大崎町の名産である鰻を使った商品開発をしてもらったり、大崎町のイベントにギャル曽根さんや橋本マナミさんにご出演いただいたり、知り合いのテレビディレクターと一緒に、世界一小さなマイクロドローンを使って大崎町を紹介するPR動画を作ったり、楽しくお仕事させてもらっている。

左から2番目:橋本マナミさん、一番左:すずきBさん

中央:笠原将弘シェフ、一番左:すずきBさん

左の写真
左から2番目:橋本マナミさん、一番左:すずきBさん
右の写真
中央:笠原将弘シェフ、一番左:すずきBさん

そんなわけで大崎町には何度かお邪魔しているのだが、鹿児島空港から、車で高速に乗り、1時間半かけて辿り着く、電車も通ってない、県南部の田舎の小さな町、大崎町。鹿児島県の地図でいうと左が薩摩半島、右が大隅半島。その大隅半島の真ん中あたり。
伺うたび、向かう時は「遠いなあ」と思うのだが、現地で大崎町の美味しいものを食べたり町の人たちと触れ合ってるうち、帰る時には「遠いけど、いい町だなあ」と思って飛行機に乗ることになる。

そして今回の大崎町の旅は、僕にとっては1982年のTBSドラマ「2年B組仙八先生」のあの“前川克也”役(あれからもう40年か)以来の国民的スター、薬丸裕英さんをアテンドしながら、今までにない貴重な体験をさせてもらったので書かせていただく。

右から3番目:薬丸裕英さん、右から2番目:すずきBさん

大崎町の魅力01

「知られざる美味しいマンゴー」
〜鉢植えというアイデア〜

“マンゴーといえば宮崎”というぐらい宮崎県の「太陽のタマゴ」が有名だが、日本中の美味しいフルーツをたくさん食べつくしている薬丸さんが試食し「宮崎を超えるかも」と唸ったマンゴーが、実は大崎町にあった。 僕も試食してみて驚いた。糖度でいうと、太陽のタマゴは15度なのに対し、こちらは16度を超えるという「甘さ」もさることながら、口当たりが素晴らしい。余計な繊維質ながく、プリンのように「とぅるりん!」と口溶けする美味しさ、と言ったら伝わるだろうか? なぜこんなに美味いのか、その答えは農園にあった。

お邪魔したのは安田農園さん。マンゴーの木の根っこを見ると、なぜか全てが1本1本鉢植えされている。「試行錯誤して、鉢植えに行き着いたんですけど、これが美味しさの理由なんですよ。鉢で栽培すると、根が無駄に広がっていかないから、水分コントロールできて、糖度がアップするんですよ」といったことを、鹿児島弁と独特のイントネーションで農家さんが答えてくれた。なるほど。水っぽくないからより甘く感じる。手間暇はかかるようだが、丁寧な作り方。そんな知られざる大崎町マンゴーには、ある名前が付けられていた。ちょうど女の子が入れるぐらいのサイズの鉢で丹精こめて作る。そんなことから“ハコ入り娘”ならぬ「鉢入り娘」とネーミングしたそうな。あまりに美味しいので、大量に「ハコ買い」したい気分だったことは言うまでもない(笑)。

大崎町の魅力02

「混ぜればゴミ、分ければ資源」
〜焼酎作りの歴史も生かされた
リサイクル術〜

鹿児島といえば芋焼酎、ということで「新平酒造」という大崎町の酒蔵にも見学に行ったのだが、まるで美術館のような庭があって、迎賓館のような素敵な施設に、僕も薬丸さんも感動しきり。
こんなオシャレでセンスあふれる空間もある大崎町、実に奥深いなあと。建物は、焼酎の酒蔵というよりモルトウィスキー蒸留所のようなレンガ造りで、中に入ると琉球畳の長い廊下があって、さつま芋を粉砕し、芋焼酎を発酵させるプロセスが間近で見学できるようになっている。この時はタイミング的に作業していなかったのだが、うっすらと発酵の残り香を感じる。そして、午前中見学したゴミ処理場とあることがリンクした。

実は大崎町は、2006年から2020年の間に「リサイクル率日本一」を14回も達成している、言うなれば、町民の努力によってゴミを最小限にしてる町。大崎町の2020年度のリサイクル率は83%らしいのだが、全国平均が20%と聞けば、いかにゴミが少ないかが分かる。その秘密が午前中見学したゴミ処理場「そおリサイクルセンター」と、お昼に見学した小学校にあった。
薬丸さんのお父様とおじい様も卒業した大崎小学校(卒業生名簿にその記載があって薬丸さんも感激していた)。その児童たちは、給食を食べた後、飲み終えた牛乳パックを切って洗って、綺麗に積み上げていた。まるで工作で作品を作るかのように、リサイクルを楽しみながら、日常に取り入れていた。

また大崎町のゴミ処理場は、焼却炉に頼らず、低コストな廃棄処理をシステム化していた。例えば生ゴミ。あれこれ混ぜたままだとゴミでしかないが、生ゴミをさらに細かく分別し、粉砕して発酵させると、生ゴミは堆肥となり、農業に必要な資源に生まれ変わる。その現場に驚いた。いわゆる鼻をつく生ゴミの臭いではなく、まるでパン工場や酒蔵のような、発酵のいい香りがした。元は生ゴミだった土のような茶色い山が、自らのバクテリアの発酵で熱を持って湯気を発し、焼酎醸造の過程で麹菌がぷくぷくするように、呼吸しながら生きていた。聞けば生ゴミを粉砕する機械も、なんと芋焼酎作りで使う芋の粉砕機を代用しているという。
まさに芋焼酎の産地・鹿児島らしいアイデア。なるほど、大崎町の高いリサイクル率のゴミ処理には、薩摩藩時代から培われた芋焼酎作りの技術や叡智が生かされているのか。そんなことを思いながら、自分も今後はちゃんとゴミの分別をしようと、初めて本気で思いながら、これまでの適当でいい加減だった自分のゴミ出しを猛省したことは言うまでもない(笑)。

大崎町の魅力03

「まだまだ知られてない
=伸びしろ抜群」
〜わざわざ行ってみたい薬丸印の街に〜

今回、薬丸さんのルーツである父方の祖父のお墓参りにも同行させてもらった。上り坂の細い道が複雑に入り組んでいたり、石垣が残っていたり、お城の跡を感じる場所にそのお墓はあった。「薬丸自顕流」という剣術で島津氏に仕え、戦国時代に大崎町を守っていた武将、「薬丸弾正兼持」(やくまるだんじょうかねもち)。墓石に刻まれたその文字を見ると、ああ、薬丸さんの祖先は命懸けでこの町を守り、生き抜いたんだな、と感慨深い。

そしてこの度、そんな大崎町のPR大使となった薬丸さんは、その志を継ぐかのように「大崎町を守る」使命感に燃えていた。
大崎町は、人口約1万2,000人の小さな町。黒牛、黒豚、マンゴーやパッションフルーツの産地でもあるが、特に鰻の養殖が盛んだ。温暖な気候、シラス台地の下に流れる綺麗な地下水に恵まれているため、肉厚で美味しい鰻が育つ。薬丸さんと「おおさき町鰻加工組合」も見学させてもらったのだが、養殖から加工まで一貫して管理し、生産者の顔が見えるのも安心だ。ふるさと納税の返礼品として日本一売れてる大崎町鰻の蒲焼きは、捌かれるとすぐ加工場へ。新鮮なままふっくら蒸され、タレを4回つけながらじっくりと焼き上げられ、最後は炭火で香ばしく仕上げられる。食通として知られる薬丸さんも唸るほど、ふわっふわの身と甘いタレが実に美味だった。

ところで、田舎の小さな町をより元気にするためには、町の魅力を多くの人に知ってもらうだけでなく、わざわざ訪れたくなるスポットがある町にし、他県から遊びに来てもらい、移住してもらうことも大切だ。
あまり知られていないが、大崎町には風光明媚なエリアも存在する。町の南東部、志布志湾の海岸に面した「くにの松原」という場所にキャンプ場があり、初めて訪れた。白い砂浜と青々とした松林が広がり、灼熱の昼間なのに歩くと風が涼しく、良い「気」を感じる。まさに白砂青松の日本らしい絶景の中に、ログハウスのバンガローやキャンプエリアも整っている素敵な場所。

訪れた薬丸さんも言っていた。「この場所で、もっと何か出来そう」と。そう、サウナなのか、グランピングなのか、何か目玉になるものを作れば話題になるかもしれない。東京からわざわざ静岡のサウナ「しきじ」(地下水が最高)へ行って鰻や天ぷらを食べて帰る大人が増えてるように、大崎町にもそんな場所があったら、他県の人が訪れるキッカケになるかもしれない。
そうかあ。最高の地下水で育った鰻がふっくら蒸される町で、人も蒸されて同じ地下水で整い、鰻を食べてさらに整う。──サウナと鰻でととのう町。サウナ×うなぎ、さうなぎ? SAUNAGIと書かれた謎のTシャツが流行ったりして(笑)。そんな夢への可能性、大いなる伸び代を感じる町だった。

そういえば薬丸さんは今回、取材のインタビューでも、我々との会話の中でも、つねに当意即妙なコメントをしていた。胸を打つスパッと鋭い言葉の切れ味は、あの薬丸自顕流の一撃必殺につながるのか、など思いつつ、いつか“薬丸印”の新名物が大崎町で作れたらいいなあ、と勝手な妄想を膨らませているのは言うまでもない(笑)。

すずきB
すずきB

放送作家。1970年、静岡県生まれ。1990年、早稲田大学在学中に、「さんまのナンでもダービー」で放送作家デビュー。その後、「学校へ行こう」「ウンナンのホントコ」「桑田佳祐の音楽寅さん」「ぷっすま」「秘密のケンミンSHOW」「ヒルナンデス」「CHEF-1グランプリ」「植野食堂」「友近・礼二の妄想トレイン」「銀座ゴルフ倶楽部」「勝俣かっちゃんねる」など多くの番組を構成する他、「雅食倶楽部spoona」では食にまつわるイベントを企画・運営中。